観察日記

フジバカマは薬草でもあります

フジバカマ(キク科)

 秋の七草の一つ。として、渡りの蝶アサギマダラの 蜜源としては何度も紹介していましたが、純粋にフジバカマとして紹介していなかったことに、今更ながら気づきました。

 フジバカマは中国原産といわれる多年草です。本州の関東地方以西・四国・九州に分布しています。国外では朝鮮半島と中国に分布しています。葉は3裂しますが、下部の葉は分裂しないことも多いです。葉は対生し、短い葉柄があります。秋に茎の上部で分岐し、淡紅紫色の少数の管状花よりなる頭状花序を密生します。花が似るサワヒヨドリは葉柄がないことで区別し、ヒヨドリバナとは、葉がやや厚く、表面に光沢があり裏面に腺点がない点で区別できます。

 和名「藤袴(フジバカマ)」は、花の色が藤色を帯び、花弁の形が袴のようであることからこの名があります。

 薬草です。つぼみがついた時に全草を採取して乾燥させたものを生薬名「蘭草(ランソウ)」と言います。利尿、通経や黄疸、腎炎などで体にむくみがある場合には、煎じて食間に服用します。糖尿病の予防と治療にも効能があります。浴湯料としても利用します。

テンニンソウ

 「案内番号③」でテンニンソウが咲いています。

 本州、四国、九州に分布する日本固有種で、山地の樹陰に生える多年草です。地下に太い根茎があり、茎は四角張り、高さ1m程で直立します。葉は対生し、柄があり、初秋に茎の上部に花穂を出し、淡黄色で唇形の花をつけます。萼は短い筒状で、5つに裂け、花冠は下部が筒状です。雄しべ4、雌しべ1は、ともに花冠より長くなります。

 和名は「天人草(テンニンソウ)」。葉を虫の食害によってボロボロにされることが多く、その姿を天人の羽衣に見立てたという説がありますが、牧野富太郎博士は「天人草の意味は何によるものかわからない」とおっしゃっています。

「ぬばたま」  ヒオウギの漆黒の種子です

 ヒオウギの種子が姿を見せ始めました。園内各所で見られますが、「スワンヒルの庭」でたくさん見ることができます。

 花が咲いている時期は、名前の通りお雛様が手にしている扇状に並ぶ葉に目が行きます。6枚の花被片からなるオレンジ色の花も、とても綺麗です。

 そして今、黒い種子が見事です。「黒」と表現するだけではもったいないと感じてしまい、タイトルでは「漆黒」とさせていただきましたが、吸い込まれそうな程、真っ黒です。このヒオウギの種子は、万葉集では「ぬばたま」と表現され、枕詞として「夜」や「黒」といった言葉にかかります。万葉の時代(およそ西暦7世紀後半から8世紀後半)の人々は、ヒオウギの種子を見て、暗闇や黒髪といったものを形容しようとしたわけです。「時を超えても、一つの植物を見て同じ感覚を持てる」ことが素敵だなあと、感じてしまいます。

  

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